旧天王貯水池一般公開及び造形展 「1日」天王貯水池
平面図(プラン・スケッチ)

2006年11月4日(土) ― 5日(日)
午前9:30 ― 午後4:00
旧天王貯水池

(堺市堺区中三国ヶ丘町3丁目78番地) >>会場アクセス

 アンドレイ・タルコフスキーの映画においては水がしばしば重要なモチーフとして使用され、時に物語そのものとなって映像を紡いでいく。雨が降る、雨が止む。しずくが垂れる、しずくが止まる。温泉が湧く、温泉が枯れる…。タルコフスキーの「水」はonとoffを繰り返しながら流れることをやめない。
  旧天王貯水池に一歩足を踏み入れる。不思議なことにそこが決して「off」の状態であるとは感じない。もちろんすでに役割を終えた構造物であるから「on」の状態であるはずがない。しかしこの建築空間がもつ固有の強度は決して「off」であることを自らに選択させない。現実と非現実、あるいは日常と非日常といったものの「はざま」、やわらかい中間領域がそこにある。
  今回、建築家の青井によって紡がれた4つの眼差しがonとoffの間を強調する表現力となってこの空間に現れる。陳はOHPを利用して水面に浮かぶ気泡を極めてフラットな映像として投影することで、2次元と3次元の中間を鑑賞者に提示する。片桐と池側はそれぞれいけばなと照明というメディアを用いて、連続する10の小部屋の始まりと終わりをあるいは終わりと始まりを現出させる。そして曽我部は水の連続性を音によって表現することで、空間が今も持つ水との親和性を体感させる。
  天王貯水池を去るときに、目の前にある日常に非現実感が漂うかもしれない。ぜひそんな体験をお楽しみ下さい。




  • 青井弘之(アオイヒロユキ)
    1963年大阪府堺市出身。京都大学工学部土木工学科卒。1989年〜2006年6月、建築家故内井昭蔵に師事、チーフアーキテクトとして「鳥取県知事公舎」「石川県七塚町 海と渚の博物館」「鳥取環境大学」等の作品を担当。2006年7月より青井弘之建築アトリエ主宰。けやき通りまちづくりの会、堺なんや衆などの地元のまちづくり活動にも参画。

  • 陳維錚(タン・ズイチン)
    1976年マレーシア、ジョホール出身。現代美術作家。京都精華大学院芸術研究科博士後期課程特別研究生。アニメーション、実験映画やパフォーマンス表現のほか、近年は鑑賞者の参加によって変化する装置や空間演出を手がけている。一貫して存在のリアリティを追究するコンセプトのために多様な素材と表現が用いられている。日本国内主な個展「越境するメッセージ」、「科学と芸術がみたもの」、「制度の住人」など。グループ展や「事実雄弁」(台湾)、「流体都市」(フランス)など海外も発表多数。http://tanjc.net

  • 曽我部哲也(ソガベテツヤ)
    1973年愛媛県出身。中京大学情報理工学部情報メディア工学科助手。主に画像処理プログラムMAX/MSP+Jitterを軸に、リアルタイムに変化する映像、センサー入力による映像やCGの制御、色域を抽出しモーターを制御しながら対象を追跡するロボットなどの基礎技術を応用し、作品にどのように応用するかを研究する。特に風景画像を利用して、音を生成する作品を制作。主な作品発表として、「JURIX」JURIX with Vitamin B2(エイブルアート近畿2002・大阪)、「楽音」市民プロジェクトミーム博覧会(愛・地球博)、「幻灯」展(中京大学ギャラリーCスクエア)がある。http://aru-e.com/artists/sogabe.htm

  • 池側隆之(イケガワタカユキ)
    1968年大阪府出身。名古屋芸術大学デザイン学部メディアデザインコース専任講師。専門は映像デザイン。映像作品の制作/発表と併せて、異分野間をつなぐインタープリタビリティ技術(翻訳)、コミュニケーション回路についての研究を行う。現在、日本映像学会・理事。Deuxieme Manifestation Internationale Video et Art Electronique (モントリオール/カナダ) 、Pandaemonium Festival of Moving Images(ICAロンドン/イギリス)、第4回ふくい国際青年メディアアート・フェスティバル(福井市)などで主に作品を発表。http://paralapo.com

  • 片桐功敦(カタギリアツノブ)
    1974年大阪府堺市出身。幼少の頃より生け花を学ぶ。十六歳で渡米。ワシントン州の高校を卒業後、Cornish College of Arts にて陶芸を学ぶ。帰国後、二十三歳で花道みささぎ流三代目家元を襲名。六年前より桜が咲く季節に桜一色の個展を毎年開催。本年四月に今会場の旧天王貯水池にて折れていた桜の大枝を市役所玄関ホールに活け好評を得る。現在は生け花の指導の傍らGallery+Book salon 「主水書房」を主宰し、生け花を通して培われた感性を活かした活動に取り組んでいる。http://web.d-department.jp/project/gallery/wall/010.html

地勢上井戸水に塩分が多い水質事情から強くその整備が望まれ、明治43年という近代の比較的早い時期に落成し、昭和37年まで使用されていた堺市の上水道施設。煉瓦(+コンクリート)造の5つに区切られたヴォールト架構からなる貯水槽を有する。水道施設に見られる直射日光を遮るための土盛りで周囲が覆われ、瀟洒な点検用の煉瓦の出入口がここに煉瓦造の建物があることを明示している。出入口同様内部もデザイン性、空間性に優れ、近代化産業遺産の保存問題が注目されている昨今、ますますその文化的価値が重視され、地元住民からも愛されている歴史遺産である。平成13年、国指定登録有形文化財。>>詳細

11月5日(日)午前11時より先着20名様程度、当施設を保存担当されている堺市教育委員会文化財課井渓明主幹から、建物の説明をしていただけます。ご希望の方は当日整理券をお配りいたします。

2006年「けやき通り文化の集い」
での旧天王貯水池一般公開の中での企画

主催:けやき通りまちづくりの会
共催:三国ヶ丘、榎校区自治連合会
後援:堺市 堺市教育委員会 堺商工会議所 朝日新聞 
    堺観光ボランティア協会 堺市「堺の魅力づくり」市民自主事業

連絡先: 090-9697-3724(青井)


旧天王貯水池 アクセス・地図