このシリーズは「都市」というキーワードから始まった。
われわれは、しばしば歴史の流れ、時代の潮流、もしくは社会の情勢に流されていると感じる。なぜフリーターは迫害されるのか、流行の先端をいくのはなぜか、反戦運動で何を変えられるのか…適者生存の集団構造の中で、反抗する時に感じた無力さから、われわれは従う=流されることを覚えた。
生命のはかなさも、反することのできない自然の法則の中から覗くことができよう。この流体の中で、色とりどりの粒が生命のように次々と誕生し、やがて複雑な宇宙を形成しているかのようにも見える。また、粒同士が結合して集団となったり、大きな塊が分離して消えたりもする。個体の動きは活発にみえるが、一歩引いてみれば全体の大きな流れに気づくであろう。果たしてこれは、個体が流されているのか、個体同士の蓄積されたエネルギーで大きな流れが生み出されているのか…いずれにせよ、この流体の動態と現象は、われわれを取り巻く環境、都市とかぎりなく酷似しているのではないだろうか。(2006.6.9) |